ケータハムF-1チームの2014年ドライバーラインナップの発表は、我々日本人には実にうれしい内容だった。かねてより噂されていた日本人ドライバー小林可夢偉選手の加入が正式に決定したのだ。日本人唯一のF-1ドライバーとして活躍し、鈴鹿では表彰台にも上ったにも関わらずザウバーチームを解雇され(MVPを取ったのに追い出された松井秀喜選手のようなもの。ヤンキーズほど名門ではなかったけど)、2013年には所属チームが決まらずに他のカテゴリーに参戦していたが、ようやくF-1に戻ってこれたのである。
しかし、手放しではよろこんでいられない。今回契約した「ケータハム」はイギリスのスポーツカーメーカーで、「スーパーセブン」などのマニアックな車両のメーカーとして知らされている。ただし、本業の評判はさておきそのF-1チームとなると問題は大きい。まずは慢性的な資金不足による開発の停滞。F-1はシーズンを通して開発し続ければならず、その資金は天文学的金額に上り、いくつものチームが毎年解散の危機を噂され、ケータハムはその常連でもある。
2013年はかろうじてレースをスタートするものの、まったく別のクラスのマシンのように遅く、もうひとつの常連チーム、「マルシャ」とビリ争いを演じ続け、結果最下位に沈み、F-1参戦以来今だに1ポイントもとれておらず、今年も進歩がなければ撤退するとされる。
つまり、まともなマシンを可夢偉選手に用意出来るのかが疑問である。ヤンキースからレイズへの移籍なら頑張り様があるが、3Aか2Aのチームがメジャーで戦ってるようなものである。それでも、頑張れば来シーズンはもう少し良いチームへの道は開ける。だからとにかくそこにいなければいけないのだ。
もうひとつ、チームメイトになるドラバーであるマーカス・エリクソン選手の存在がある。スウェーデンン出身の24歳で、ここ数年はGP2で戦っていたが、2009年には全日本F-3選手権に出場し、チャンピオンになっている。また、その年の「F-3世界一決定戦」とも言われるマカオGPでは優勝こそのがしたものの、現ウイリアムズのバルテリ・ボッタスやマルシャのジュール・ビアンキ、今季レッドブルに昇格したダニエル・リカルドらを大きく上回るパフォーマンスを見せている。その年のブラウンF-1チームで若手ドライバーテストにも参加している。スウェーデン人は物静かだけど、ドライビングはアグレシップであり、ルーキーイヤーは攻撃的だから可夢偉選手もなめてかかると痛い目に合いそうだ。
がんばれ可夢偉