公民権運動のことを考えると、困難と絶望の繰り返しだっただろうなあ、と思います。希望を見出すことの方が難しいと、現代の日本に住んでいても痛烈に感じることがあるのに、あの時代、何がそんなに人の心を照らしていたのでしょうか。何が光だと感じていたんでしょうね。
オバマ大統領も落涙した人間ドラマ 静かに闘った黒人執事の姿
農園の奴隷の子供として育ったセシル(フォレスト・ウィテカー)。農園を出た後、ホテルのボーイを経て、大統領の執事となる。歴代の大統領の側で歴史が動くさまを間近で見ていた。セシルの息子、ルイス(デヴィッド・オイェロウオ)は公民権運動に身を投じるようになり、白人に仕える父親のことを恥じるように。公民権運動、ベトナム戦争などアメリカがたどった歴史とセシルの家族の成り行きが交錯する人間ドラマ。
黒人差別撤廃に向けた活動、と聞くと、「黒人だけが活動していた」と思いがちなのですが、そうではなかったと見れば分かります。ルイスが参加していた公民権運動には白人学生も加わっていました。最初は少なかったのですが、次第に増えていきます。明らかにシーンとして抜いているので、映画として強調したいポイントだったと私は思っています。
公民権運動は、黒人だけでなく社会的弱者、ゲイやレズビアンの人たちにも広がって行きます。ショーン・ペンが主演した映画『ミルク』は、実在の人物、ゲイで公職に就いたハーヴェイ・ミルクを主役にしたものです。興味のある方は是非。
私は自分が困難な状況に立ったとき、考えることがあります。第2次世界大戦時、ユダヤ人として強制収容所に入れられた精神科医フランクルがその様子をつづった本『夜と霧』のこと、公民権運動のこと、現代社会において厳しい状況に置かれている人たちのこと。
「彼らに比べて私はなんて幸せなことか」と思うのではなく、「その人たちがまだ希望を捨てていないのなら、私もまだ捨ててはいけない」と心に深く刻むのです、何度となく。
自分が得る幸せや権利が自分のものだけでなく、長い歴史の中で人々が努力して作り上げたこと、そして私も僅かながらストーリーを積み上げ、未来につなげていくことを忘れないでいようと思います。
私たちには今日も明日も困難が待ち受けている。それでも私には夢がある。
Even though we face the difficulties of today and tomorrow, I still have a dream.
―――― マーティン・ルーサー・キング・ジュニア Martin Luther King, Jr.
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