周りの人が落ち込んでいる時、元気のない時、あなたはどんな言葉をかけているだろうか。あなたの言葉によってその人は再び立ち上がる力を本当に得ているのだろうか。
米国の心理療法士、ステイシー・カイザーさんによると実は声を掛けた本人はその気でも、言われた側の心には全く響いていないことがとても多いのだという。つまり言った側の自己満足で終わっているケースがほとんどというわけだ。
言葉は4つに分けられる
ソーシャルサポート(社会的関係の中での精神的・物質的支援)に関する研究者たちは人が人を元気づけたり、励まそうとする際に掛ける言葉は大きく4つの種類に分けられるという。
まず、一つ目は相手の言葉に共感し慰め、感情に訴えようとする言葉や態度である。背中や肩に手を添え、心をこめて相手を励まそうとするパターンだ。
二つ目は問題を具体的に解決するための手助けを行うというもの。自分だったらどうするかや過去の経験を踏まえ相手の状況が進展するよう感情論ではなく現実論として協力しようとするものである。
残る二つの方法は、相手の抱える問題が本当は大したことではないことを伝え、気分を軽くさせようとする方法と、買い物やドライブなどの気分転換に誘って気を紛らわそうとする方法である。
しかしいずれの方法も万能ではなく事態を悪化させることにしかならない場合も多いという。落ち込んでいる人と励ます側の人との間には大きな意識の食い違いがあるのだ。
価値あるアドバイスを贈るために
ミネソタ大学のウィリアム・ドハティー教授によると大切なのは「まず、よく話を聞くこと」だという。相手に話したいだけ話をさせ、聞き手はその言葉の要所要所を反復して声に出す。
そのことによって相手は「自分の言葉を聞いてもらえている。理解してもらえているんだ」と感じ心が落ち着くのである。
そしてその次は「相手を認めること」である。「あなたにはこの問題を乗り越えるだけの力がある」そのことを伝え、復活するためのきっかけを与える。無理なく心に前を向かせることが重要だ。
逆に間違っても「時間が解決してくれるさ」などと言ってはいけない。このような決まり文句はなんの慰めにもならず、相手が悩んでいるその現状を否定してしまいかねない。
また、ドハティー教授はこうも言っている「引き際をわきまえること。」あなたが心尽くしの言葉を掛けたなら相手のリアクションがどうであれそこで言葉を止めることが大切だ。あなたの言葉に対し賛同しなかったり反論してきたとしても議論してはいけない。
「タイミングが全てだ」という意見もある。ひたすら話を聞いてあげるべき時と、前向きな言葉を掛け気持ちを引っ張り上げるべき時がある。見極めは難しいが相手の本来の人間性を信頼することが大切なのは間違いない。