人間はあるピークを過ぎるとそれ以降加齢とともに能力は衰える。これはある意味常識であり、どんなスポーツ選手も必ずいつかは引退する。しかし、それは肉体の話。人間の脳は加齢と共に「変化する」が「衰えはしない」という研究結果があるのだ。
処理スピードは20歳がピーク
マサチューセッツ工科大学のジョシュア・ハーツホーン氏の行った調査によると、人間は加齢によって鈍る面と逆に鋭くなる面の二つがあるという。他人の名前や顔を覚える能力は若い頃にピークを迎えるが、語彙力や状況を分析能力はある程度歳をとってからも成長し続けるのだ。
ジョシュア・ハーツホーン氏は過去に知能テストを受けた経験のある2500人を対象にそのスコアを再分析すると共に推理や記憶、社会的知性に関するテストを行った。
その結果、計算スピードや過去の記憶を思い出す速度については10代後半から20歳前後に人はピークを迎えることがわかった。また、一度にどのくらいの記憶を操作できるか(同時並行的に作業を行う能力)については20代半ばが最も高く、その後30代後半以降は衰えることがわかった。
感情的知性は70歳まで伸びる
その一方で、感情的知性が発達し始めるのは30代後半以降だ。感情的知性とは例えば写真に写った人の表情を見て、その人が何を考えているかを見抜いたりする能力である。これは高度な協議や交渉を上手くまとめあげるためには必須の力と言える。
感情的知性は40歳前後でピークを迎えるがその後60歳代までほとんど低下しない。また、同じく語彙力も70歳までは伸び続けるようだ。
加齢によって脳の瞬発力は衰えるが、別の力はたしかに発達し続ける。日本では団塊の世代と呼ばれる人々が65歳以上となり大量に引退した。目の上のたんこぶが消え去ってホッとしている人も多いだろう。だがしかし侮る事なかれ。奴らの脳みそはまだまだ元気なようである。