ニューヨークの賃貸物件17万5000件以上をリスト化したウェブサービス「StreetEasy」のデータを分析した結果、
ニューヨーカーにとって部屋を借りる上で最も重要なのは「立地」であることが判明しました。
特に「職場と近い」というのは非常に重要なポイントで、人々は通勤時間を1分短縮するために
アンケートの平均で月56ドル(約5700円)を支払うとのこと。これにはニューヨーク特有の事情も絡んでいます。
StreetEasyのデータをを解説すると家賃、と地下鉄による通勤時間の相関関係は、
通勤時間が長くなればなるほど物件の家賃が下がっていることから、
ニューヨーカーが露骨に通勤時間を重視していることがわかります。
中心部から1分の移動距離度に家賃が連動してきっちり下がります」。
また、家賃と通勤時間の関係は、通勤30分圏内の物件が極端に高額である点も興味深いところで、
通勤時間が30分以上になると、家賃と通勤時間のつながりは極端に薄くなります。
一般的なニュヨーカーの電車通勤の限界点が30分とされる根拠となる調査結果となりました。
日本で住む我々としては少々贅沢な条件におもえるかもしれませんが、日本とアメリカの住環境の違いが
単純な緯度距離だけで家賃の良し悪しになるのもおもしろいレポートです・
この1分の通勤時間の短縮は往復で2分、それを20日間行うと仮定すると、月56ドルで40分の時短の価値をニューヨーカーは認めていることになります。
今回の分析は、StreetEasyの中でも数が多い1ベッドルームの物件6万3000件に対象を絞って行われました。
対象の物件は、物件から最も近い地下鉄の駅と結びつけられ、そこからニューヨークのミッドタウンやマンハッタン・ダウンタウンまでの距離を計算し、
回帰分析が行われたとのこと。その結果、StreetEasyは1ベッドルームの物件とミッドタウンやダウンタウンから最も近い駅までの移動時間の間に
「平均通勤時間を1分減らすごとに家賃が56ドル上がる」という関係を発見しました。
なお、データによると多くの1ベッドルームの賃貸物件は2人の労働者に使われており、
ニューヨークの中心部であるビジネスセンターに近い場所で暮らす人々は裕福層であることもわかっています。
StreetEasyのエコノミストであるKrishna Rao氏は
「ニューヨークの不動産で暮らすということは、全てにおいてトレードオフであると、人はすぐに気づくはずです」と語っています。
ただし、この時のトレードオフとは通勤時間についてのみに言えることではありません。
「通勤時間が短くて済む」ということは、すなわち都市部と家が近いということなので、
家の近くにクラブといった娯楽や、レストラン・スーパーマーケットというような必要なものがそろっていて、
誰かの家に遊びにいったり逆に遊びに来てもらったりが可能という「利便性」があるということを意味します。
そして、この利便性よりも家賃の安さを優先した場合、地下鉄に揺られる通勤を余儀なくされるような、都市の端っこに家を構えることになります。
また、不動産の評価やコンサルタントを行うMiller Samuel Real Estate Appraisers & Consultantsの代表Jonathan Miller氏は、
「ニューヨーカーは通勤時間を1分短縮するために月56ドルを支払う」という分析結果を「理にかなっている」と見ており、
「歩行に適した都市において、輸送ハブ近いということは非常に大きなインセンティブになります」と語っています。
車での通勤が簡単な都市や魅力的な都心部のない場所、裕福層が多くない土地では、
物件選びの時に通勤時間という点にそこまで重視されないのですが、
ニューヨークでの移動手段は主に地下鉄・バス・タクシーなどなので、自ずと重要なポイントとなってくるわけです。
ただし、この分析は自宅から最寄りの駅までに存在する移動手段や、電車の速度の違いなどを考慮していないこと、
全ての労働者がミッドタウンやダウンタウンで働いていないことなどから、
完全にニューヨークの不動産事情を反映しているとは言えない可能性があるとのことです。