イースト菌が人類を救う5つの理由

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未定 詳細なし

パンやピザの生地を膨らませてくれるイースト菌。それ以外にもイースト菌は、糖分をアルコールと炭酸ガスに分解してアルコール発酵し、私たちが美味しく飲んでいるビールやワインをつくってくれます。また、糖尿病患者にとって重要なインスリン注射はイースト菌からつくられています。そして、今年ノーベル医学生理学賞を見事受賞した大隅さんは、イースト菌の中にオートファジー(細胞の自己成分を分解する機能)の仕組みを見い出しました。

そんな知れば知るほど素晴らしい微生物のイースト菌に、実は私たち人類は救われることになるとの説が唱えられています。

1. 効果的で安全な鎮痛剤

2015年、スタンフォード大学の研究者らが、遺伝子組み換えのパン用イーストを使って糖をオピオイドの前駆体へ分解することに成功しました。オピオイドといえばケシからとれるアルカロイドなどといったいわゆる麻薬を指し、アメリカでは鎮痛などの医薬的使用よりも陶酔作用を目的とした使用が問題となり、オピオイド使用による多数の死亡ケースも確認されています。ですが、イースト菌を使った研究で発見された鎮痛剤は強い副作用がなく、安全に誰でも摂取できるようになるとされており、注目されています。現在はまだ研究の途中で実用化はまだ少し先の話になりそうですが、期待度200%です。

2. 細胞生物ネットワークの解明

科学者らは、イースト菌の中の遺伝子を用いることで、人の細胞の遺伝的ネットワークを詳細に表すマップをつくることに成功しました。イースト菌の中に存在する6,000の遺伝子のうちのほとんどが人の体内にも存在するため、人の遺伝子機能を詳細に知ることができました。この研究から得られた情報とマップは、遺伝的な要因による疾患の治療などに大変役立つものになるそうです。

3. 自食細胞

前述のノーベル医学生理学賞を受賞した大隅さんは、イースト菌の中にオートファジー(自食作用)の仕組みを見い出しました。細胞は、規則的にバランスを整えることができなくなると老廃物が蓄積されてしまい、結果、人は病気を患ってしまいます。

大隅さんは、イースト菌の中に鍵となるオートファジー遺伝子を発見しました。彼の20年間に渡る研究の末に成し遂げられた偉業によって、科学者らは哺乳類にみられる遺伝子を特定することができるようになりました。人の体内におけるオートファジー遺伝子の機能性の研究結果は、神経疾患や癌といった病気の解明と治療に大きく貢献すると期待されています。

4. デザインされて生まれた3番染色体と16番染色体

2年前、科学者らは初めて真核細胞を用いて3番染色体と16番染色体をつくりだすことに成功しました。

イースト菌株を一からデザインすることで、研究者らはより正確にその機能性を把握・管理することができるようになったそうです。初のイースト染色体を生み出した研究者は、染色体を微調整することでイースト菌の成長率を操ることができました。イースト菌の管理・調整が簡単になることで、イースト菌を使った薬の調合もより簡単になりますが、今後の課題は全染色体をデザインすることだそうです。

5. 満腹感を与えてくれるイースト菌

植物細胞とタンパク質が、植物ホルモンのオーキシンにどのように反応するのかを調べた遺伝子組み換えのイースト細胞を用いた研究で、オーキシンに通常の反応を示さない植物は異常なほどの発育不良が見られることが分かりました。爆発的に人口が増え、気候変動の問題に直面している地球において、食物の増産は大きな問題の一つです。よって、科学者らの植物の発育についての詳細を理解する必要性は高くなっています。

科学者がオーキシンのコードを解明するうえで、非常に重要な役割を果たすのがイースト菌です。科学者が、ホルモンの経路の至適化を試みたり、有用性のある特徴をもった作物をデザインする際に、イースト菌が活躍しています。

この世に存在する病気をなくすためには、まずその病気そのものの解明が必要です。様々な疾患の治療法を編み出すうえでもまた、イースト菌は重要なカギを握っています。

研究を続けるうえで、テクノロジーは欠かせないツールですが、年々進化を遂げるテクノロジーで新しい発見が次々と発表されています。

近い将来、イースト菌とテクノロジーによる地球を救う大発見があることを期待したいですね。

参照元:Discover.

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