原作は『走れ、走って逃げろ』というタイトルの本です。主人公のモデルになった人物がいて、8歳のときにナチス・ドイツから逃れ終戦まで生き延びたという壮絶な人生を歩んだ男性です。現在はイスラエルに渡り、子供と孫がいます。
ふたつの名前は、愛と勇気を与えてくれた
ポーランドのゲットー(ユダヤ人強制居住区)から脱走した8歳のスルリックは”ポーランド人孤児ユレク”として生きることになった。ナチス・ドイツから逃げられても、過酷な状況が次から次へとやって来る。生きる理由には父との約束があった……。
音楽と美しい風景が印象に残ります。ロケーション撮影のため、雪のシーンでは本当に撮影現場に雪が降っているのです。
戦争時を舞台とした映画、もしくは戦争映画をどう見るかという点ですが、私の場合は「個人の語り」を重視して見ています。
その個人がどのような経験をし、どのようなことを考え、その人の中にある文脈でどう思ってどう行動したのかということが映画の中で描かれていると、作品に奥行きと立体感が生まれると思っています。
この映画の中でも、主人公のスルリックであったからこそ考えて行動できたのではないかと思う点がいくつもありました。しかし、どうしようもなく時代や運命に翻弄される姿もあります。
運の良さが味方した時もあれば、そうでないこともとても多く、「なぜ子供1人、そんなに追いつめるのだろうか」と憤りを覚えるシーンがいくつもありました。是非、興味のある方は映画館で。
特に本編とは関係ありませんが、主人公のスルリックを演じているのは双子です。1人の役を、シーンによって兄弟でかわりながら演じているのです。
普通に見る分には差支えないのですが、身内は手に取るように「あ、今お兄ちゃん、あっ、弟にかわった」と分かるのではないかなあと思っています。一卵性の双子が知り合いにいますが、まるで違う顔だとよく思います。もしかしたら、身内でなくとも分かる方には分かるかも。
映画『ふたつの名前を持つ少年』 8月15日ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー
公式サイト http://www.futatsunonamae.com/
監督:ペペ・ダンカート 出演:アンジェイ・トカチ、カミル・トカチ、ジャネット・ハイン、ライナー・ボック イタイ・ティラン
原作:ウーリー・オルレブ作 『走れ、走って逃げろ』 母袋夏生訳 岩波書店
原題:RUN BOY RUN /2013年/ドイツ・フランス/カラー/108分/ © 2013 Bittersuess Pictures
配給:東北新社 Presented by スターチャンネル 宣伝協力:ブレイントラスト