私たちの生活がどんどん豊かになるにつれ、地球の環境を脅かす公害は悪化します。先進国ではリサイクルが日常的になっていますが、発展途上国では公害や工業廃棄物が当たり前という状況は変わりません。最も重要なのは公害をなくすことですが、公害をゼロにすることは不可能です。そこで、マサチューセッツ工科大学のMIT Media Labは、公害を利用して何かできないかと考えました。
世界で初めての試み―公害からつくられたエアインク
MIT Media Labは、大気汚染に着目し、汚染された空気を利用してインクを作り出すデバイスを開発しました。
同デバイスを用いて作られたインクはAIR-INK(エアインク)と名付けられ、資金調達サイトKickstarterでキャンペーンを行っていますが、すでに目標金額の倍を超える資金を調達済みです。一般の人々がいかにこの製品に注目しているかがうかがえます。
エアインクの製造プロセスは3つのステップからなります。
- MIT Media Labが開発した特殊デバイスKAALINKが車のマフラー部分に取り付けられ、KAALINKを通じて車から排出されるススを逃さず収集します。車が45分間にわたって排出する排気ガスでおよそ30mlのエアインクをつくることが可能です。
- 次に、収集されたススから重金属や発がん性物質を取り除かれ精製され、炭素に富んだ染料ができあがります。
- この染料を使って異なる種類のインクやペイントが作られ、エアインクの完成です。
地球の環境を変えるのはアート!
エアインクは主にアートペイント用で、丸いペン先の2ミリマーカー、そして15ミリ、30ミリ、50ミリの平芯マーカー、150ml入りのスクリーンプリント用インクボトルが用意されています。
MIT Media Labは、十分な資金を得られた場合には、油性ペイント、布用ペイント、アウトドアペイントなどの製造も手掛けたいとしています。
2ミリのマーカーペンは35ドル、2ミリと50ミリのマーカーセットは70ドルなど、ペイントセットは数種類用意されているので、自分のペイントスタイルに合わせて好きなものを選べます。
汚染された空気が綺麗に精製され、安全で高品質、防水のインクへと生まれ変わる-なんとも画期的なアイディアです。多くの車にKAALINKのようなデバイスを設置することができれば汚染された地域の環境を大きく改善することができそうです。
アートは、見た目に美しいだけではなく、地球の環境をも変えることができる大変素晴らしいものです。今後もこのような素晴らしいプロジェクトが増えることを期待したいですね。