現代的なシークエンス法を用いた血液サンプルの研究中に、研究者らは新しいタイプのウイルスを発見したそうだ。
この血液サンプルは1970年代に採取されたもので、C型肝炎や ヒトpegivirus(旧G型肝炎)に類似のウイルスだという。
Hepegivirus 1(HHpgV-1)と称される新規ヒトフラビウイルス
コロンビア大学のウイルス学者であるAmit Kapoor氏は、新たな発見を期待して1974年から1980年の間に採血された血液サンプルを分析することにした。
70年代には誰が献血できるかなどといった細かな規制はなく、血液サンプル自体も厳格な審査を通ったものである必要はなかったため、Kapoor氏は新しい何かを見つけるにはこの時代のサンプルを研究すべきだと考えたのだ。
そして彼の思惑どおり、30年という一昔前に採取された血液サンプルから新規ウイルスが発見された。この新しいウイルスは、Hepegivirus 1(HHpgV-1)と呼ばれる新規ヒトフラビウイルスであった。
その後、70年代の血液サンプルよりも新しい血液サンプルを研究分析したところ、この新規ウイルスに感染されていた人の血液内にはこのウイルスは発見されなかったという。このウイルスは時の経過と共に除去されたのだ。
現代的なディープシークエンス法の有効性と新規ウイルスの知られざる役割
現在、Kapoor氏と同チーム研究者らは、Hepegivirus 1(HHpgV-1)の検査用として抗体を生成するための研究を続け、同ウイルスが人体においてどのような役割を果たしているのかを掘り下げていくという。
現代的なシークエンス法による血液サンプル研究は、新しいウイルスを発見する上で非常に有効だということが今回の事象からも分かる。だが、カナダエドモント・アルバータ大学のウイルス学者であるMichael Houghton氏は、「肝臓やその他の内臓疾患において今回発見されたウイルスが果たす役割が解明されたわけではない」と述べている。
一方、コロンビア大学のウイルス学者であるIan Lipkin氏は、ある男性の血液サンプルがデング熱感染していることを発見したが、それまではデング熱感染の診断はされていなかった。これを受けて、研究者らはウイルスへの露出を完全に把握できる新しい血液検査のプラットフォームの開発に乗り出した。
不思議と神秘に満ち溢れている人体。研究者らの日々の努力が実をむすび、新たな病気やウイルスなどが発見され、そして病気の原因解明や病気の治療につながっていく。
技術の進歩と共にさらなる発見が期待できる。ウイルスが発見された時点ではまだ未知なる段階だが、我々人間の将来にとっては大変大きなステップなのである。
参照元:The Scientist