世界大戦から100年のタイミングで オシムの故郷で進む出版プロジェクト

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旧ユーゴスラビア連邦の独立国の一つ、ボスニア・ヘルツェゴビナの首都・サラエヴォ。オーストリア皇太子が暗殺され、第一次世界大戦のきっかけとなったサラエヴォ事件(1914年)、冬季五輪(84年)、多民族融和が破壊され、多くの市民が犠牲になったサラエヴォ包囲戦(92~96年)などで知られます。そのシンボル、サラエヴォ国立図書館(旧市庁舎)のモノグラフ(研究書)出版を目指し、キックスターターで支援を募っています。

19世紀末から続くサラエヴォ旧市庁舎の歴史は、『Sarajevo City Hall: Building, Destruction and Revival』プロジェクトのウェブサイトの動画で、概要を知ることができます。包囲戦では砲撃で炎上し、激しい内戦の象徴になりました。余談ですが、サラエヴォは、元サッカー日本代表監督のイビツァ・オシムの故郷。民族や宗教の違いを許容してきた、愛する故郷を破壊する包囲戦勃発に抗議し、ユーゴ代表監督を辞任しました。

近代以降のサラエヴォの歴史を目撃してきた建築物についての研究書はこれまで存在しませんでした。サラエヴォ事件からちょうど100年というタイミングで、「Studio URBING」は市当局の協力も得て、初のモノグラフ出版を計画しています。貴重な資料が収められ、ドキュメンタリー映像も収録されるとのこと。クラウドファンディングではSarajevo City Hall: Building, Destruction and Revivalの編集・英訳・印刷費などとして、1万5000ドルの支援を呼び掛けています。

民族対立が引き起こした旧ユーゴの分裂。今なお内戦の爪痕が色濃く残るサラエヴォでのプロジェクトは、日本で暮らす私たちにとって縁遠いものです。しかし、民族や宗教の違いから生じる対立は現在進行形で存在しています。「過去から学ぶ」視点に立てば、大変意義あるプロジェクトです。あなたの街の図書館にはその街の歴史を記した本が何冊もあるでしょう。過去を知ることで、未来を考えてみませんか。

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