歩くことは人間の基本的な動きの一つだが、歩く際の効率をもっと上げたいと考えたことはあるだろうか。多くの人はないと答えるだろう。だが、発作や脳卒中の後遺症による歩行障害で悩む人にとっては歩行時の効率を上げることは非常に重要なことだ。
歩行時の効率が上がるのに電力は一切使わない外骨格デバイス
カーネギーメロン大学とノースカロライナ州立大学の研究者らが、歩行時の効率を高めるための外骨格デバイスを開発した。
これまでにも多くの歩行サポートデバイスは開発されているが、外部電力を必要とするものだ。だが、同大学の研究者らが開発中の外骨格デバイスは外部電力を一切必要としないという。
歩行時の効率を上げるということは、歩行時に消費されるエネルギーをいかに減少させることができるかということだ。2007年から8年の歳月をかけて研究・開発されたというこのデバイスを着用した場合、歩行時に必要となる消費エネルギーを7%ほど下げることができたという。
これはおよそ5キロ分の負荷が減ることになり、電力を必要とする歩行サポートデバイスと同じ効力があることを意味する。
歩行時のバイオメカニクスと超音波画像の解析から、ふくらはぎの筋肉は身体が前方向に押し出された時以外にも、エクササイズ後にアキレス腱をぴんと伸ばすストレッチのようなアキレス腱を張る動作を行った時にもエネルギーを生み出すことを同研究者らは確認した。
この状態の時に生み出されたエネルギーを外骨格デバイスに開放することで歩行時のエネルギ-消費率を下げることが可能となる。外骨格デバイスのクラッチ部分(踵)からアキレス腱に平行してバネが張られており、足が地についた時にクラッチがバネをONの状態にする。
足が後方向に向かいアキレス腱が最も張られた状態の時にエネルギーがためられる。そして、足が地を離れた時にクラッチがOFFの状態になり、開放されたふくらはぎからのエネルギーを利用して歩行の効率を上げるという仕組みだ。
歩行障害を持つ患者の未来をサポート
この外骨格デバイスはカーボンファイバー製なので、片足450グラムと軽量ながらも歩行時の衝撃などに耐え得る強度の高いボディとなっている。
同研究チームの研究者らは、完成までにはまだ時間を要するが実用化に向けて研究開発を続けていくと述べている。また、膝や腰にも利用できるサポートデバイスの開発も視野に入れているという。
軽量で外部電力を必要としないこの外骨格デバイス、脳卒中などといった病状の後に歩行障害で悩んでいる患者やリハビリを続ける患者にとっては大変役立つデバイスになることは間違いない。
最新の技術をもってすれば、軽量でエネルギー効率が良く、かつ一般人にも手が届く価格帯のデバイスも夢ではない。そして特筆すべきは、このような新技術を本当に必要としている人の生活に近い将来大きな変化をもたらすことができるということだろう。
参照元:gizmag