不透明な物体を透視するにはX線や放射線のみが有効だと多くの人は思っているだろう。だが「透視眼」というものが存在する。
透視眼で困難な手術も実現可
その見た目はX-MENのキャラクターであるサイクロプス着用の破壊光線を発するバイザーにそっくりだが、この新たな技術は悪者をやっつけるために開発されているわけではない。
いや、安全な透視光を利用した透視眼技術は将来的にX線の代わりを果たすことになり、難易度の高い手術で利用され、腫瘍などをレーザーで取り除くことも可能だと言われているので、腫瘍=悪者をやっつけるのにかわりはないか。
問題とされているのは、こういった光は不透明な物体を通過した瞬間に分散してしまうということだ。
だが科学者は、不透明な物体を通過して分散してしまった光をかき集め、通過した反対側で再度利用可能な光となるよう研究を続けている。今度はX-MENではなくスーパーマンの理論。DCコミックとMarvelコミックの戦いだ。
科学者は、透視画像が大気によって歪められる度合いを計算する補償光学の技術を空間光モジュレータに光を通すことで固体へと変化させ、様々な部位の光線速度を遅らせることに成功した。
光がモジュレータと不透明な物体を通過すると、反対側にある検出器が分散された光がどこから発せられたのかを検知し一貫したイメージを形成する。
早期の実験はうまくいった。収集された光は分散された光より1000倍以上もの威力・濃度をもって形成されることが分かった。この結果に感銘を受けた他の科学者らが、実験で用いられた技術をさらに改善し、レーザー光線の周波数を変換する集中性超音波を使って実験を行った。
変換されたレーザー光線は反射鏡によって跳ね返り物体を通過し、最初に放たれた光線にエネルギーを加えることで点火。このプロセスで科学者らは不透明な2層のレイヤーの間のわずか数ミクロンの距離に離れて位置する蛍石を透視することができた。
さらに昨年パリの科学者らは、生きたねずみの耳を透視することに成功している。新しいタイプのボディスキャナーの登場だ。
様々な分野における透視眼の活躍に期待
この新たな技術が完全な形として出来上がるまでにはまだまだ時間を要するだろう。だが確実に前進しているのは確かだ。この技術が実現すれば、医療分野だけではなく、考古学分野や美術分野などでも役立つのではないだろうか。
例えば採掘された古代の道具を解体することなく透視することで、その物質や使われていた時代・人物に関する情報を確認できるだろう。科学ジャーナルのNatureは、シャワーカーテンの向こう側を透かし見るスマートフォンアプリは開発しないのか、との問い合わせをよく受けるそうだ。残念ながらその予定は全くないそうだ。
参照元:engadget